2014年10月13日

森林資源の活用法

地域とともに活躍する川村学園女子大学


多様な森林資源のさまざまな活用法(1)


1. 森林の機能と木材利用

IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書(2013年)によれば、世界の平均地上気温は1880〜2012年の間で0.65〜1.06℃上昇しており、地球温暖化は間違いなく進行しているとされています。また、20世紀半ば以降の世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素等)濃度の増加によってもたらされたと結論付けられています。

日本の平均気温について見ても、長期的には100年当たり約1.14℃/100年の割合で上昇しており、特に1990年代以降、気温の高い年が頻出していることが報告されています(平成26年版森林・林業白書)。

1997年に京都市で、「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」が開催され、先進国の温室効果ガスの排出削減目標を定める「京都議定書」が採択されました。「京都議定書」では、2008〜2012年までの5年間(第1約束期間)の温室効果ガスの排出量を、基準年(1990年)と比較して先進国全体で5%、日本では6%削減することが約束として定められました。

「京都議定書」については、2012年にカタールで開催された「気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)」で改正案が採択され、2013〜2020年までが「京都議定書」の「第2約束期間」に決定されました。翌年の「同条約第19回締約国会議(COP19、ワルシャワ)」において、日本は2020年度の削減目標を2005年度比3.8%減とする目標を示しました。

温室効果ガスを削減する主要な方法の一つとして、森林による二酸化炭素の吸収が挙げられます。「京都議定書」においても、森林等による二酸化炭素の吸収量を削減目標の達成手段として算入可能であることが明記されています。

植物は、葉の気孔から吸収した二酸化炭素と、根から吸い上げた水を原料としてブドウ糖を合成することができます。これを光合成と言い、植物は太陽の光エネルギーを利用することで自らの栄養源となるブドウ糖を体内で作ることができます。一方、動物は光合成を行うことができないので、直接または間接的に植物を栄養源、活力源として摂食することが必要です。従って、植物が存在しなければ、人間をはじめとする動物は生きていくことができないのです。

植物は動物の栄養源として重要であるばかりでなく、光合成で温室効果ガスである二酸化炭素を吸収することにより、地球温暖化を軽減するという重要な役割も果たしています。ブドウ糖が作られるのは、葉の細胞の中にある葉緑体という組織です。光合成では、根から吸い上げた水が分解されて酸素が生成します。即ち、植物は光合成を行うことで、動物の呼吸とは反対に二酸化炭素を吸収し、酸素を放出しているのです。

光合成で作られたブドウ糖は、葉でビタミンCやアミノ酸等の原料となる他、砂糖(ショ糖)の形で茎や根に運ばれてエネルギーとして使われる他、酵素やタンパク質となって植物体の形成に関与します。木本植物である樹木の場合は、幹の部位に運ばれてセルロース、ヘミセルロース、リグニン等の細胞壁構成成分や、生育環境に適応した樹種固有の微量成分(抽出成分)に変換されます。

樹木には針葉樹(スギ、ヒノキ、カラマツ等)と広葉樹(シラカバ、ブナ、アカシア等)がありますが、いずれも幹の主成分はセルロース、ヘミセルロース及びリグニンです。各々の含有量は、セルロース50%程度、ヘミセルロース20-30%、リグニン20-30%です。針葉樹と広葉樹でヘミセルロースとリグニンの含有量が少々異なりますが、全体的には類似しており、樹種ごとの違いはほとんどありません。

セルロースは分子が束になって集合した状態(ミクロフィブリル)で存在しています。木材は、セルロースミクロフィブリルをリグニンやヘミセルロースが取り囲んで強固な構造をもたらしています。セルロースが鉄筋、リグニンがコンクリート、ヘミセルロースが両者の馴染みを良くする接着剤の役割を果たしていると例えられます。

上述のように樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収し、炭素(具体的にはセルロース、ヘミセルロース、リグニン)として樹体内に蓄える働きがあります。樹木が木材として住宅や建造物に利用される間も、その炭素は蓄えられています。従って、木造住宅等の建造物を建設することは、都会に森をつくるのと同じ効果があり、木材利用も地球温暖化軽減に貢献することになります。

2011年に開催されたCOP17において、住宅等に使用される木材(HWP、Harvested Wood Products)に貯蔵されている炭素量を温室効果ガスの吸収量として計上できることになりました。これにより国際ルールの中でも、木材製品による炭素貯蔵効果が評価されるようになりました。

日本の森林資源は、2012年3月末現在で約49億m3の蓄積量となっています。一方、2012年の国産材供給量は1,969万m3であり、木材自給率は27.9%となっています(平成26年版森林・林業白書)。樹種別にはスギが最も多く、次いでカラマツ、ヒノキの順になっています。2012年の日本の木材の総需要量は輸入材を含めて7,063万m3でしたから、2012年の森林の総蓄積量49億m3は、単純に計算して年間の木材消費量の約70倍に相当することになります。

このような状況下、林野庁は2011年7月に「森林・林業基本法」を見直し、「森林の有する多面的機能の発揮」と「林産物の供給及び利用」の目標を新たに設定しました。「林産物の供給及び利用」の目標としては、2020年の国産材の供給・利用量を3,900万m3(総需要に占める国産材の割合:50%)とすることが示されました。

国産材利用率50%を目指すため、適切な森林施業や木材の伐出・運搬を低コスト化するための路網(林道)整備を加速化することに加え、国産材の需要拡大のための技術開発に向けた取組が行われています。

その一つが2010年10月の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行です。2010年度に新築・増築・改築を行った建築物のうち、木造の割合は、建築物全体では43.2%であるのに対し、公共建築物では8.3%に留まっていました。そこで、学校、病院、図書館等の公共建築物を積極的に木造化する政策が採択されました。

木造校舎と鉄筋校舎で授業中の小学生の疲労症状を比較すると、どの学年でも木造校舎の方が疲労症状が少ないことが分かってきました。小学校や中学校の教師についても、蓄積疲労の増加を抑制する効果があることが示されています。校舎の木造化は、教育活動の支援にもなるようです。

公共建築物の木造化は、各都道府県でも積極的に取組まれており、都内の優良老人ホームや地域での村立の診療所などが建設されています。

今後の建築用資材として注目されるのが、現在開発中のCLT(Cross Laminated Timber、直交集成材)です。CLTとは、木材のひき板を繊維方向が層ごとに直交するように重ねて接着したパネルのことです。欧州では既に公営住宅やショッピングモールなどの中高層木造建築物の構造材として利用されており、近い将来、国産材の需要拡大に大きく貢献する材料として有望です。

土木分野における木材利用量の増加も図られており、宮崎県内の林道に国内最長(140m)の車道橋が建設されています。長野県ではスギ製材やカラマツ製材を用いた木製のガードレールが建設されています。これらのガードレールでは、支柱と支柱をつなぐ横梁に木材が使用されています。

また、用材にならない低質な木材の有効利用として、割り箸が作られています。日本では毎年約250億膳の割り箸が消費されているそうです。国産箸の原料は、スギ、ヒノキ、トドマツなどの針葉樹が主で、構造材を採った後の端材が用いられます。形状によって呼び方が異なり、中太両細の「利休箸」、全長に渡って溝をつける「元禄箸」などがあります。

以上述べたように、森林は光合成によって二酸化炭素を吸収し、炭素として樹体内に蓄える働きがあります。また、木製品や住宅として利用される間も、その炭素は蓄えられます。そして伐採後、適切に植林して成長の良い森林を育てることが、森林の二酸化炭素吸収機能を最大限に発揮させることになるのです。

次回は、樹木の樹種に固有な微量成分(抽出成分)の役割と、これらを人間が日常生活でどのように利用しているかについて述べたいと思います。


抽出成分1.jpg





木材の構成成分針葉樹(スギ、ヒノキ、カラマツ等)





抽出成分2.jpg



木材の構成成分広葉樹(シラカバ、ブナ、アカシア等)





割りばし3.jpg



用材にならない木材の有効利用 –割り箸- (利休箸と元禄箸)





(2)につづく


生活創造学部 生活文化学科 非常勤講師 大原誠資




posted by 園遊会 at 10:22| Comment(0) | 生活
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