2014年10月22日

森林資源の活用法(2)

地域とともに活躍する川村学園女子大学



多様な森林資源のさまざまな活用法(2)



2.樹体内の微量成分(抽出成分)の役割


樹木の幹は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等の細胞壁構成成分の他に、生育環境に適応した樹種固有の微量成分(抽出成分)から構成されていることを前回、述べました。抽出成分とは、有機溶媒または水に可溶な低分子化合物群の総称で、非常に多種多様な抽出成分が存在することが知られています。

抽出成分は樹木中の含有量は一般に少量ですが、木材の色、香り、耐朽性、シロアリに対する抗蟻性等の木材の性質を決定している重要な成分です。

樹木の幹の部分の断面を見ると、幹は外側から樹皮(bark)、辺材(sap wood)、心材(heart wood)に識別できます。このうち生きている組織は辺材だけであり、樹皮(正確には外樹皮)と心材は死んだ組織で、細胞は抜け殻(細胞壁)のみになっています。抽出成分は、死んだ組織である心材や外樹皮に多く含まれ、カビや細菌の生育を阻害する作用を有しています。

葉の光合成で作られたブドウ糖は砂糖(ショ糖)の形で幹の部分に運ばれてきます。樹木は運ばれてきたショ糖を原料に抽出成分(抗菌物質)を合成し、細胞の内腔に放出します。これを心材化現象と言います。心材に含まれる抽出成分の抗菌性により、樹木の心材部は死んでいる組織であるにもかかわらず、長時間、腐朽せずに存在できるのです。

一般に熱帯産材は日本産材よりも抽出成分含有量が高く、多いもので15〜20%の抽出成分を含むものがあります(日本産材は2〜3%)。熱帯地方は高温多湿で木材腐朽菌が生育し易い環境であり、熱帯産樹木は環境に適応するため、腐朽菌に対して抗菌活性を示す抽出成分を大量に生合成して蓄えているのです。

ガーナ、タンザニア等のアフリカ産木材は高温、強紫外線という樹木にとって厳しい生育環境であることから、紫外線を吸収し、かつ抗菌活性を有するポリフェノール性抽出成分(フラボノイド類)を多く含有しています。アフリカ産材に濃褐色系の材色のものが多いのは、これらの抽出成分を含むことに因ります。

次に、樹皮について述べたいと思います。樹皮は樹体の最外部にあり、紫外線から樹体内を保護するとともに、哺乳類や昆虫による摂食を防ぐ役目を果たしています。これらの機能を果たすため、樹皮には材部に比べて多くの抽出成分を含んでいます。

中でもタンニンは多くの高等植物の樹皮に多量に含まれている天然ポリフェノール成分で、草食動物の摂食に対する植物の防御物質と考えられています。タンニンはタンパク質と結合する性質を有し、動物の消化酵素の活性を阻害する作用を有します。また、40〜320nmの紫外線を吸収する作用を有し、紫外線ストレスから樹体を護っています。

タンニンは多くの高等植物の樹皮に広く分布していますが、中でもアカシア樹皮は30%以上のタンニンを含んでいます。また、ヤナギやカラマツの樹皮もタンニン含有量が20%近くに上ります。タンニンは樹木の樹皮を熱水抽出することで、茶褐色の粉末として取り出すことができます。化学的には緑茶の主成分であるカテキンと類似した化学構造の化合物です。

侵入種であるタイワンリスが、日本各地で樹木の樹皮をかじる問題が生じています。タイワンリスは内樹皮中の砂糖(ショ糖)をかじるのが目的ですが、被害が大きい樹種は樹皮中のタンニン含有量が少ない傾向があります。

また、ブナアオシャチホコという毛虫の食害を受けたブナ葉は、葉中にタンニンを生合成することによって摂食に対する抵抗性が誘導されます。ブナアオシャチホコの摂食が収まると、ブナはタンニンの生合成を止め、タンパク質を合成することで成長していきます。自ら移動することができない植物は、体内にタンニンを蓄積することによって昆虫や草食動物による攻撃(環境ストレス)から自身を防御しているのです。

植物の外敵は紫外線や草食動物だけではありません。アルミニウムも植物の生育に極めて有害な金属です。世界の陸地の約3割を占める酸性土壌では、有害なアルミニウムが溶け出して植物の生育を阻害しています。ところが、オーストラリア産樹木のユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)は、アルミニウムを高濃度に含む強い酸性土壌でも生育することができます。これは、ユーカリの根に含まれるタンニンが根に侵入したアルミニウムを吸着して無害化しているからです。

上述したようにタンニンは、樹木自身にとって環境からの様々なストレスに対する生体防御という重要な機能を果たしていますが、人間にとっても利用価値の高い有望な物質となっています。

タンニンは皮を革にする性質があり、ワニやオーストリッチの皮を原料とした高級ハンドバックの製造に使われています。また、フランス海岸松の樹皮から抽出したタンニンは、血液サラサラ飲料水のフラバン茶として商品化されています。タンニンは樹皮だけでなく、リンゴやカカオの実にも含まれています。最近の調査研究により、プロシアニジン(タンニン)を主成分とするリンゴポリフェノールが人間の体脂肪の低減に効果的であることが示されています。

今回は、樹木に含まれるタンニン等の抽出成分が樹体内で果たしている重要な役割について記しました。

次回は、森の香りと植物の葉の効能について述べたいと思います。




森林2−1.jpg


          
樹木幹の断面(外側から樹皮、辺材、心材)





森林2−2.jpg



アフリカガーナ産樹木16種(ポリフェノール性抽出成分を含むため、濃褐色系の材色)





2−3森林.jpg



樹皮から抽出・精製したタンニン粉末





(3)につづく


生活創造学部 生活文化学科 非常勤講師 大原 誠資




posted by 園遊会 at 15:41| Comment(1) | 生活
この記事へのコメント
勉強になります。
Posted by フィービー at 2014年10月23日 11:47
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