2014年11月20日

森林資源の活用法(4)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





多様な森林資源のさまざまな活用法(4)

4.木質バイオマスのエネルギー利用

これまでに、成長した木をタイミング良く伐って木材として様々な形で利用し、新たに植林することで地球温暖化軽減に貢献することを述べました。今回は、木質バイオマスのエネルギー利用について述べます。

2012年の国産材供給量が1,969万m3であることは既に述べましたが、森林から木材を生産して利用する際には、低質で材料としては利用できない様々な廃棄物が発生します。木質バイオマスは、これらの廃棄物全体を意味する言葉として使われています。

これらの木質バイオマスを燃やしてエネルギーとして利用すれば、その分だけ化石燃料の消費を回避できます。木質バイオマスを燃やすと二酸化炭素が発生しますが、これは元々大気中に存在していたものを樹木が吸収したものであり、全体として二酸化炭素は増大しないことになります。このことをカーボンニュートラル(Carbon neutral)と言います。

木質バイオマスは、その発生形態から「工場残材」、「建設発生木材」、「林地残材」に大別されます。工場残材は、製材時に発生する材料としては利用できない背板、鋸屑、樹皮などのことです。建設発生木材は建造物の解体時に発生する木材で、既に建設リサイクル法(2000年)で再資源化が義務付けられていることから、バイオマス発電用の燃料として使われています。林地残材は、間伐等の森林施業に伴って発生する枝葉、伐根、端材などで、資源としての潜在的な利用可能性を有するものの、収集・運搬に経費がかかることから、ほとんどが林内に放置されているのが現状です。

木質バイオマスからは色々な種類の燃料が作られています。現時点で実用化されている技術としては、直接燃焼、エステル化、炭化及び固形燃料化があります。直接燃焼や固形燃料化では、チップ、木質ペレット、薪として既に熱や発電に利用されています。炭化製品である木炭の国内生産量は3.0万トン(2012年)で、5年前に比べて約2割減少していますが、木炭は電源無しで調理・暖房に利用でき、長期保存も可能であることから、災害時の燃料として貴重と言えます。

木質ペレットは粉砕した木くずを円柱状(直径6〜10mm、長さ10〜30mm程度)に圧縮成型した固形燃料で、ストーブやボイラーの燃料として利用されています。ペレットの長所として、「@形状が一定で取り扱い易い、Aかさ密度が木材チップの約5倍でエネルギー密度が高い、B運搬が容易で貯蔵スペースが少なくて済む」などが挙げられます。同重量の木材チップと木質ペレットの容積を比較すると、ペレットはチップの約1/5になります。

21世紀に入って以降、日本のペレットの生産量は急激に増加しており、2012年には約98,000トンに達しています。それでもバイオマス利用の先進国であるドイツ、スウェーデン等の欧州諸国と比べると1/10以下の生産量です。2012年9月に政府7府省によるバイオマス事業化戦略が決定され、事業化を重点的に推進する実用化技術として木質バイオマスからの固形燃料化が選択されたことから、今後も木質ペレットの生産量の増加が期待されます。

木質バイオマスから輸送用燃料(バイオエタノール)を製造する技術については、2005年頃から産学官が連携して精力的に実証試験が実施されました。森林総合研究所(つくば市)は秋田県北秋田市に実証プラントを建設し、スギ材からバイオエタノールを製造する実証運転を行いました。森林総合研究所の採用した方法はアルカリ蒸解・酵素糖化法という方法で、1トンのスギチップから216リットルのバイオエタノールが製造できることを実証しました。固定費を含む全製造コストが約260円/リットルと試算されており、実用化のためには、林地残材等の原料費の低減や副産物利用が課題となっています。

最後に、木質バイオマス発電について記します。日本は、国内で使用される石油、石炭、天然ガス等の化石燃料の大半を外国からの輸入に依存しており、2012年におけるエネルギー自給率は5%にすぎません。このような中、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の「再生可能エネルギー」に対する関心が高まっています。

政府は、2002年に「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」を定め、電気事業者に対して太陽光、風力、バイオマス、中小水力、地熱等の新エネルギーから発電される電気を一定以上利用することを義務付けました。これを受けて、木質バイオマスを活用した発電が2012年3月末時点で全国の56ヶ所の施設で行われています(平成26年版森林・林業白書)。

2012年7月には、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)が導入され、再生可能エネルギーを用いて発電された電気について、電気事業者が一定期間、一定の価格で買取る義務を負うこととされました。木質バイオマスを原料とした場合の買取価格は、林地残材33.6円/kWh、工場残材25.2円/kWh、建設発生木材13.65円/kWh、買取期間は20年間とされました。同制度導入を受け、2014年1月現在、全国で37の施設が同制度によって売電を行っています(平成26年版森林・林業白書)。

この制度に要する費用の一部は電気料金に反映され、全国の家庭や企業等の消費者が支払うことになっています。

ドイツでは2000年にFIT制度が導入されました。同国の全発電量に占める再生可能エネルギーの比率は、2000年には6.4%でしたが、2012年には23%に増大しています。日本でもFIT制度の開始により、太陽光発電の本格的な導入が始まっています。

今回は、木質バイマスのエネルギー利用の現状を概説しました。木質バイオマスは他の再生可能エネルギーと異なり、原料の供給が必要です。エネルギー利用を推進するための課題は沢山ありますが、最も重要な点はやはり原料の安定供給にあります。そのためには、我が国の豊富な森林資源を活かした林業の活性化に産学官連携して取組むことが今後も益々、重要になると思われます。




木質バイオマス.jpg



木質バイオマスのエネルギー変換・利用
バイオマス付属.jpg は実用化技術、他は研究・実証段階の技術





木炭.jpg



木炭製品





木質ペレット.jpg



木質ペレット(木くずを円柱状に圧縮成型した固形燃料)





チップ.jpg



同重量の木材チップ(左)と木質ペレット(右)、ペレットは
チップの約1/5の容積になる。





プラント.jpg


         
木質バイオエタノール実証プラント(森林総合研究所)





生活創造学部 生活文化学科 非常勤講師 大原 誠資




posted by 園遊会 at 14:42| Comment(0) | 生活
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