2015年04月06日

金色の夢―オリエントの失われた黄金(2)

地域とともに活躍する川村学園女子大学



古代オリエントのイメージと黄金(2)


 金に関する有名な史実のひとつは、リュディアの金貨のはなしである。リュディアは世界で最初に純金金貨を発行したとされるところである。金貨はただの金とは異なりかなりの技術力を必要とするし、純金ということは明らかに精錬技術が進歩したことを示している。

というのも、金は銀との合金(エレクトロン)の形ででることが多く、金製品といわれるものも、エレクトロンであることが多いからである。また貨幣は流通するにあったって、その保証を担保する権威が必要である。





金貨.jpg



エレクトロン貨(Electrum )





リュディアが紀元前6世紀にはその保証ができるほどの繁栄した大国になっていたこと、また経済規模が金貨の支払いを可能にするほど拡大していたことがあきらかである。

 紀元前6世紀のリュディア王クロイソスは、そのような条件をクリアできるほどの力を持ち世界で最も裕福な人といわれたほどの王であった。彼は信仰するアポロンの聖地デルフォイに多くの金製品や金貨を貢納したといわれ、その痕跡は今も残っている。

彼の裕福さはその後、彼がペルシア帝国を立てたキュロス王に敗れて、王国を失ってからも、彼の孫にあたるピュティオスは、世界最大の富豪と言われ、クセルクセス王にペルシア戦争の戦費を賄うと申し出たほどの富を所持していたという。つまりクロイソスの富は孫の代まで引き継がれるほどの伝説的なものであったといえる。





クロイソス.jpg


クロード・ヴィニョン画『リディアの農民から貢ぎ物を受けるクロイソス』(1629年)




 金貨は実は高価すぎて普通の買い物に使われることはない。どこに使うかというとまず神殿への貢納、賄賂、または戦費の支払いである。ペルシア帝国もリュディアにならって金貨を作ったがその利用は上記に限られていたから、これが正しい金貨の使い方であったといえるのだろう。その点ではペルシア戦争の戦費の支払いをかってでたピュティオスは所有する金貨の正しい遣いかたを示しているといえよう。

 トゥタンカーメン王の金の遺物に代表されるエジプトの金ほどに有名ではないにしろ、金が重要視されない世界はない。オリエントはその代表的な世界であった。しかし喧伝されたオリエントの金を産出した金鉱も取り尽くされてしまっては、如何ともしがたい。最近の考古学の調査が地道ではありながら、金を手掛かりにオリエントでいかに採掘や精錬の技術が発達したか、またその流通経路や経済規模を明らかにすることで、事実に基づいた歴史研究を展開してきた。

金のもたらす本当の夢はそこにあるのではなかろうか。



川村学園女子大学名誉教授  山本 由美子




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