2015年04月29日

「赤い王朝、黄色い王朝」−五行説の世界−

地域とともに活躍する川村学園女子大学







(1)

 「シンボルカラー」「シンボルマーク」
 …みなさんよくご存じですよね。何か一つ、色や紋章を決めておいて、それによって自らを象徴するということは、どんな時代でも地域でも、個人やチームや企業、そして国家や王朝が行ってきたことです。

 源平の合戦なら、源氏は白旗、平家は赤旗。

 サッカーのナショナルチームなら、フランスは青、オランダはオレンジ。

 徳川家のシンボルは三つ葉葵の紋章、皇室のシンボルは菊の紋章。キリスト教のシンボルは十字、イスラームのシンボルは三日月。…いくらでもありますよね。




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 古代中国でも、王朝ごとにシンボルカラーが決まっていました。例えば漢王朝は赤。そして漢(後漢)の滅亡後に成立した魏(三国時代)は黄色でした。

 しかし特異なのは、そのシンボルカラーはその王朝が独自に決めたものではなく、その王朝が成立する前から決定されていたものだと言うことです。将来、今の王朝が滅亡したら、次の王朝のシンボルカラーはこれだ、と。

 新しい王朝を立てる人と言えば、かなりの英雄か、そうでなくても相当の権力者に決まっています。そんな権力者をもってしても変更できない、運命づけられた王朝の色。…どうやって決められていたのでしょうか?
 それを決めていたのが、古代中国で「万物を貫く基本法則」として広く浸透していた、「五行説(ごぎょうせつ)」という理論なのです。

 「五行説」…名前ぐらいは聞いたことあるでしょうか。

 日本では、「陰陽五行(いんようごぎょう)」という熟語となって知られているかもしれませんね。何となく、平安時代あたりの、占いとかオカルトとか妖怪変化とか、ファンタジーの世界を連想する方も多いかもしれません。

 この「陰陽五行」とは、「陰陽説」と「五行説」という二つの理論が合わさって出来た言葉なのです。どちらも、世の中の全てを説明する基本法則として信じられてきました。

 「陰陽説」の方がわかりやすいですかね。「万物は、全て二つの相反する要素(陰と陽)から成り立っている」ということです。天と地。右と左。プラスとマイナス。光と影。雄と雌。暑さと寒さ。…なるほど。どれをとっても、その片方だけが存在するということはあり得ません。

 では今回のテーマ、「五行説」はどうでしょう。

 それは、「万物は、全て五つの要素からなり、その五つは循環するように交代していく」という理論なのです。

 五つとは、例えば色なら、青・赤・黄・白・黒。

 例えば方角なら、東・南・西・北・中央。味覚なら、酸っぱい、苦い、甘い、辛い、しょっぱい。など、無数にあります。

 それらの根本となっているのが、この世界を形成しているとされた五つの元素である、水・火・木・金・土なのです。

 この五つが「循環する」とはどういうことか、その点は後回しにするとして、とりあえず「万物は水・火・木・金・土という五つの元素から成り立っている」という五行説の根本となる考え方は、いつごろ成立したのでしょうか。

 正確にはわかっていませんが、このことについて記している文献で最古のものが、いわゆる四書五経の一つである『尚書』の洪範(こうはん)篇であることは定説です。そしてその成立は、戦国時代中期(紀元前4世紀半ば)ではないかと言われています。

 そこには、古代中国の伝説の聖王である禹(う)が、世の中をうまく治めるために必要な基本原理について天から啓示を受けたことが語られています。その基本原理とは人間の行いや性格、国家の官職など9つの分野にわたります。

 その中で筆頭にあげられているのが、水・火・木・金・土という五つの元素のことです。「まずは『五行』である。一に水、二に火、三に木、四に金、五に土である」と紹介した上で、「水は流れ下り、火は燃え上がり、木は曲がったり伸びたりし、金は形を自在に変え、土は種をまき収穫するのを助ける」と、それぞれの性質が説明されます。この性質をよく理解して活かすことが重要だ、というわけです。

 この「水・火・木・金・土こそ、万物の根源だ」は、五行説の初歩中の初歩。次回は、そこからどう展開していったかを見てゆきます。


(2)につづく



文学部 史学科 教授 高津 純也




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