2017年01月15日

アメリカ大統領選挙2016 (4)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





4.なぜクリントンが負けたのか


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ヒラリー・クリントンは政治経験もあり、多くの研究者、メディアが勝利すると予想していました。今回はクリントンが負けた原因について考えたいと思います。



クリントンは11月9日の敗北宣言の中で、「最高で最も困難な『ガラスの天井』は打ち破れませんでした。しかし、いつか誰かが、私たちが考えているよりも早く達成することでしょう」と述べました。

この「ガラスの天井」という言葉は、クリントンがよく使っていた表現です。これは女性がいくら頑張っても、能力があっても、組織のトップになることを阻む見えない障害があることを意味します。この言葉は、アメリカで女性の社会進出が本格的に始まった1980年代から使われ始めました。


アメリカでは女性の社会進出が進んでいるというイメージがありますが、必ずしもそうとは言えない現状があります。スイスの世界経済フォーラムが毎年出している世界各国の男女間の不均衡を示す指標であるGlobal Gender Gap Reportでは、今年のアメリカの順位は144か国中45位でした。アメリカでは政治の世界への女性進出が意外と進んでいない現状があります。

このような状況にあって、政治の世界の最高の職である大統領に女性が初めて就任するということを多くのアメリカ人女性が望んでいるのでは、と私たちは想像しますが、実際にはそうではありませんでした。



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CNNの出口調査(CNN: Presidential Election Results 2016)で女性票はクリントンに入ったという結果が出ましたが、上記の表にみられるように、白人女性はトランプに投票している人が多いのです。



女性がクリントンを支持しなかった理由は2つあります。1つ目はサンダース旋風です。当初、クリントンは余裕で民主党の大統領候補となると予想されていました。しかし、それを阻んだのが自らを「民主社会主義者」と呼ぶバーニー・サンダースです。彼は政府の役割の大幅拡大を主張し、所得格差の拡大に対する怒りを持つ1980年から2000年ごろに生まれた「ミレニアル世代」と呼ばれる若い人々の支持を拡大しました。彼は予備選の際、クリントンを「富裕層の代表」と呼ぶキャンペーンを展開し、この見方が若年層の間に広がりました。クリントンが民主党の大統領候補になった後は、サンダースはクリントンに投票するよう呼びかけましたが、一度ついたイメージを払拭するのはなかなか難しかったようです。



また、アメリカ人の間には思いのほかクリントンに対する嫌悪感、不信感が広がっているようです。クリントンは、夫のビルと共にかつてから不正のうわさが尽きませんでした。アーカンソー州知事夫人時代には土地開発不正融資問題であるホワイトウォーター疑惑、ファーストレディ時代にはホワイトハウスの旅行事務所職員全員を解雇し、後任に大統領の知り合いを据えたというトラベルゲート、また、FBIが保存する個人情報を不正に取り寄せたというファイルゲートといったスキャンダルがありました。さらに、国務長官時代には、家族で運営するクリントン財団に献金した外国政府や企業に有利な扱いをしたという疑惑を持たれています。

また、ファーストレディ時代に医療保険制度改革プロジェクトの責任者に就任したという事実が、ファーストレディは前面に出るべきではないと考える保守派の反感をかったともいわれています。



クリントンが最も苦しめられたのはメール問題です。これは彼女が国務長官だった時に、私用アドレスで公務上のメールをやり取りしていたという問題です。大統領選直前の10月29日にFBIの長官が捜査再開を報告するという事態を記憶している方もいると思います。この報告は、少し前に明らかになったトランプの女性問題を打ち消すインパクトがありました。このような10月になってからの大統領候補にまつわる新事実を「オクトーバー・サプライズ」といいます。

クリントンのメール問題は日本でも大きく報道されましたが、なかなか日本人には理解しにくい部分があります。私的なメールサーバーを利用していたというセキュリティ上の問題に加え、クリントンに対する不信感がこの問題の裏にあるのです。

アメリカ政府の公式文書は、将来公的記録として公開されることが義務付けられています。ある一定の期間を経れば、大統領の直筆のメモでも直接見ることができるようになるのがアメリカの制度です。このルールに従えば、国務長官時代のクリントンのメールも将来的には公開されるものとなります。しかし、クリントンのように自分でメールを管理していれば、当局から開示請求があったとしても、私的なメールとして提出を拒むことができます。すでにクリントンは個人的なメールとして大量のメールを消去しているといわれています。そのメールの多くは、クリントン財団をめぐるやり取りだったという見方が強いのです。このような経緯を見たアメリカ人は、公開情報が操作されているのではないかという疑念をクリントンに持っているのです。

したがって、アメリカ人の多くは女性大統領の誕生に対して拒否感を持っているわけではありませんが、クリントンでなくてもよいと考えていたと思われます。また、サンダースを支持したような若い女性は、女性であるというだけではクリントンを支持できないという状況にあるのです。



このように大統領選は現代アメリカ社会を大いに反映しているといえます。日本に大きな影響を与えるアメリカの動きはこれからもメディアで頻繁に報道されると思いますので、ぜひ関心を持ってもらいたいと思います。

(画像はすべてWikipediaのパブリック・ドメインのものを利用しています)


文学部 国際英語学科 講師 倉林直子





posted by 園遊会 at 09:04| Comment(0) | 祭・祀・政
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