2017年07月29日

エジプトの祭(2)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





エジプトの祭り:古代エジプトとイスラームのはざまで(2)



2. 古代エジプト時代から続く祭り


 古代エジプト時代から続いていると思われるエジプトの祭りとしては、シャンム・アンナシーム、すなわち「そよ風の祭り」が挙げられます。これは春を祝う祭りで、4月に行われ、国民の祝日となっています。シャンムはもともと古代エジプト語の「シェム」、収穫月の名前であったようです。1世紀頃にギリシア人の著述家プルタルコスが書き残したことによると、古代のエジプト人はこの祭りの日に塩漬けの魚、レタス、そしてタマネギを食べていたそうです。

 現在、この祭りはコプト教会のイースターの翌日に祝われているのですが、おそらくこれはエジプトにキリスト教が広まった3世紀以降に、この祭りと復活祭、すなわちイースターが結びつけられたものと考えられます。そして7世紀以降、エジプトがアラブ・イスラーム政権の支配下に入り、人々の言葉が古代エジプト語の最終形態であるコプト語からアラビア語へと変わると、祭りの名前は「シェム」からアラビア語でそよ風を意味する「シャンム」に変化したようですが、太陰暦であるイスラーム暦ではなく、農事暦の役割も果すコプト暦で祝われる習慣は変わらなかったようです。

 このように随分と長い歴史を持つ祭りであるわけですが、変わらないことがいく点かあります。一つはこの日、人々はナイル川や公園にピクニックにいくこと、もう一つはこの日に塩漬けの魚、レタス、タマネギを食べることです。塩漬けの魚は食中毒を起こしやすく、これを食べた人が毎年死んでいる、と1世紀に生きたプルタルコスが記しているのですが、いまだにこの祭りの時期になるとメディアでこの魚を食べないよう呼びかけがあり、毎年死者がでています。危険と隣り合わせであるのに食べたい、というのはご老人にとってのお正月のお餅でしょうか。

 このほかにも、例えばルクソールで行われるアブー・アルハッジャージュの祭り(マウリド)は12-13世紀に生きたイスラームの聖者、アブー・アルハッジャージュの生誕祭のはずが、古代エジプト時代にカルナック神殿とルクソール神殿の間で行われていたオペト祭の伝統を引き継いでいる、と考える人もいます。祭りの最終日に、ルクソールの町を大きな船の山車がパレードする様子は、確かにアムン神を聖舟に乗せカルナック神殿からルクソール神殿へと運んだオペト祭を想起させます。




2の写真縮小.jpg



<シャンム・アンナシームの日の公園>





(3)につづく


文学部 史学科 講師 辻 明日香




posted by 園遊会 at 14:45| Comment(0) | 祭・祀・政
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