2012年11月17日

公的年金(3)

地域とともに活躍する川村学園女子大学



公的年金とは(その3)


3 女性と年金


 今回は、女性と関わりが深い年金の問題のうち、
(1) 第3号被保険者制度 
(2) 育児休業中の年金 
(3) 年金分割 
について触れてみます。


(1) 第3号被保険者制度


@ 第3号被保険者とは、勤労者である会社員や公務員などの国民年金の第2号被保険者(夫など)に
扶養されている配偶者(20歳以上60歳未満)です。勤労者の妻で専業主婦などが該当します。
扶養されているかどうかの基準は、健康保険と同じで、年収130万円未満です。
第3号被保険者の数は、2010(平成22)年度末で、1,005万人です。


A 保険料は、個人としては払わなくてよいのですが、扶養している配偶者が加入している厚生年金や共済年金が、
扶養されている妻(夫)の分も含めて基礎年金の財政を賄う国民年金特別会計の基礎年金勘定に供出しています。


B 第3号被保険者である期間は、保険料納付済期間として将来の老齢基礎年金の年金額に反映されます。
また、障害基礎年金の受給についても、保険料納付済期間となります。


C 第3号被保険者制度と同様に配偶者に対する給付を有する制度には、次のようなものがあります。


@ 日本の健康保険

a 健康保険の被保険者(勤労者)に扶養されている配偶者や子どもなどは、独自の保険料を負担することなく
医療保険の給付を受けられます。


b 扶養されているかどうかの基準は、第3号被保険者と基本的には同じで、年収130万円(60歳以上
又は障害者の場合は180万円)未満です。


A 米国の老齢遺族障害保険(OASDI: Old-Age, Survivors and Disability Insurance )
 
a 10年以上の結婚期間がある配偶者には、本人の老齢年金の給付額の50%の配偶者給付が支給されます。


b 本人が死亡した時は、本人が受けていた老齢年金の給付額と同額の遺族給付が支給されます。


c 米国の老齢遺族障害保険において、本人が受給する老齢年金給付に対して、
配偶者が受給する老齢年金の配偶者給付や遺族給付の割合は、それぞれ50%、100%となっていますが、
この割合は、日本の厚生年金のモデル年金(2012(平成24)年度)の場合の比率
ーそれぞれ39.6%、84.9%よりも高くなっています。




図1 70米国の老齢遺族傷害保険.jpg




B 英国の国民保険


a 退職年金の満額の基礎年金(30年の加入期間が必要)の額(2011年4月)は、
本人給付額は週102.15ポンド(約1.3万円)、配偶者給付額は58.8ポンド(約7千5百円)となっています。


b 基礎年金の本人給付に対する配偶者給付の割合は、57.6%となっています。




D 第3号被保険者制度のあり方については、さまざまな意見や議論があり、合意を見いだすことが難しい問題です。


E 被用者保険における世帯や被扶養家族についての考え方を十分に議論し、この問題を考えていく必要があると
思います。




図2 70第3号被保険者制度についての考え.jpg




(2) 育児休業中の年金


@ 育児休業中の保険料は、厚生年金も健康保険も、本人負担分・事業主負担分ともに免除されます。
子どもが1歳になった後も引き続き子育てのために休業した場合、子どもが3歳になるまで保険料の免除が行われます。


A 育児休業中の保険料免除期間は、育児休業前の保険料を納めたものとみなされて、老齢基礎金、
老齢厚生年金が計算されます。老齢厚生年金の年金額については育児休業前の給与額を基準に計算されますので、
年金額に育児休業期間中の給与低下が影響しないようになっています。この取り扱いは、
1年間の育児休業が終わった後、引き続き子どもが3歳になるまで子育てのために
休業した場合も同様の方法で行われます。




図3 80育児.jpg




B 育児休業が終わって職場復帰した後も、子どもが小さい間は、勤務時間を短縮する、
残業をしない、或いは少なくするなどの理由で、休業前より給与の額が下がる場合があります。
このような場合には、


@ 保険料は職場復帰後の給与額を基準に計算し、保険料負担が下がる。


A 年金額は、育児休業前の給与額を基準に計算し、年金額に給与の低下が影響しない。


 という仕組みで、子育てをする女性にとって安心な制度となっています。




図4 80育児2.jpg





C なお、雇用保険により、1歳(保育所に入れない場合等は1歳6箇月)未満の子を養育するために
育児休業を取得した雇用保険の被保険者に対して、休業前の賃金の50%に相当する額が支給されます。
ただし、育児休業を取得する前2年間で通算12箇月以上雇用保険に加入していなければ支給されません。


(3) 年金分割


@ 合意分割


@ 年金受給権は、一身専属の権利であるため、離婚等の場合にも、この受給権そのものを財産分与することはできず、
離婚後の女性の年金は不安定な状態となっていました。合意分割により、離婚時等に、
勤労者夫婦が厚生年金・共済年金の報酬比例部分をどうするかを決めることができるようになりました。

 
A 合意分割は、2007(平成19)年4月1日以後に離婚等をしたとき、当事者の一方からの請求により、
婚姻期間中の厚生年金・共済年金の記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。
2007(平成19)年4月1日前の婚姻期間中の厚生年金・共済年金の記録も分割の対象となります。


B 当事者双方の合意により按分割合を定めることが必要ですが、合意がまとまらない場合は、
当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます。


C 按分割合は最大2分の1です。


D 離婚等をした日の翌日から起算して2年以内に請求しなければなりません。




図5 70妻が第3号被保険者の場合 妻が第2被保険者の場合.jpg




A 3号分割


@ 厚生年金・共済年金の被扶養配偶者を有する被保険者・組合委員が負担した保険料について、
 当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本的認識に基づく制度です。


A 2008(平成20)年5月1日以後に離婚等をしたとき、
国民年金の第3号被保険者(勤労者の妻で専業主婦など)であった当事者からの請求により、
2008(平成20)年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間中の相手方の
厚生年金・共済年金の記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割できる制度です。


B 当事者双方の合意は必要ありません。請求期限は、2年以内です。




図6 70年金分割.jpg




B 年金分割の状況


@ 年金分割の件数は、2010(平成22)年度で、18,674件となっており、
前年度より3,670件増加しています。この年度の離婚数250,599組に対する比率は、 
7.5%となっています。


A 按分割合は、50%のものが94.5%となっており、均等に二分するという考え方が大宗を占めています。


B 分割を受ける者(殆んどは女性)の平均年金月額は、分割前の46,054円から分割後の79,679円へと、
33,625円増えています。




生活創造学部 生活文化学科 教授 吉武民樹






posted by 園遊会 at 22:03| Comment(0) | 生活
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