2013年07月31日

新種の化石発見とその命名

地域とともに活躍する川村学園女子大学





新種の化石発見!−名前はどうやって付けるの?−



生物の名前と分類学 −学名と和名−



 私たち「ヒト」は、地球にいる生物に限らず、宇宙のありとあらゆる「もの」に対して、名前を付けたがる生き物です。
事実、みなさんの身の周りにあるものについては、それぞれ固有名詞がつけられ、ものを区別しながら生活をしている
ことと思います。しかし、私のように、年をとってくると、「あれ」とか「それ」とか「これ」とか、その固有名詞が直には
でてこなく、代名詞で済ましてしまう場合がありますが!


 さて、星の世界では、世界中のアマチュア天文家が日夜望遠鏡を覗きながら、新しい星を探していることを耳にします。
私が子供の頃に、彗星発見の話しを学校で聞かされた記憶があります。これが「池谷関彗星:C/1965 S1 (Ikeya-Seki)」
でした。これは、池谷さんと関さんが違った場所で同時に彗星を発見したために、このように呼ばれていることを御存知
の方も多いかと思います。したがって、この場合は、発見者の名前が“星”に付けられた訳です。

このようなことでも分かるように、ものに名前を付けるときには、それぞれ何らかの意味が込められて付けられています。


ところで、生物の名前はどのように付けられるのでしょうか。


実は、名前の付け方には、厄介なルールがあります。このルールは、動物の場合、「国際動物命名規約」
(International Code of Zoological Nomenclature:略してICZNと表記)です。

この規約による名前の付け方は、18世紀にスウェーデンの生物学者リンネ(Carl von Linné;
ラテン語名でCarolus Linnaeus)(図1)により提唱された二名式命名法(二名法ともいう)が用いられ、
属名(generic name)と種名(specific name)、その後に最初に新種として発表した人の名とその発表された西暦年号で
記すことが国際的に決められていることです。



リンネの肖像画.jpg



その際の属種名はラテン語化した文字表記をイタリック(斜体)で表わすことになっています。
また、その適用は1758年1月1日からとされています。したがって、この年以前に付けられた名前は、
全て無効になるわけです。このルールに基づいて、例えば、犬は、Canis familiaris Linnaeus, 1758、
猫は、Felis catus Linnaeus, 1758といった具合に表しますが、命名者名や年号は時々省略されることがあります
(ただし、命名者と年号を付けるかどうかは、ICZNでは任意とされ、学名の一部ではありません)。
これが学名(scientific name)と呼ばれるものです。したがって、学名は世界共通の生物名であるということができます。



この学名の二名法は、私たちの名前、つまり、姓と名で作られていることとに似ていますね!



 しかし、私たち日本人は、欧米人と違って、ラテン語化した学名、すなわち、アルファベットで示された語句が、
習慣的に生活の中で馴染まないことから、上述の学名に対して対になる日本語の和名が付けられます
(ただし、和名をつけるかどうかはその分野での慣行で、付けないことも良くあります)。
和名は、当然日本国内だけで通用する生物分類の専門的に近い名前で、慣例として、カタカナ表記をすることで、
一般的な固有名詞と視覚的に区別しています(上述したように、学名はイタリック表記にすることで区別)。
したがって、分類学的に言えば、「犬」と「イヌ」は違うのです。また、「犬」は英語名で「dog」、フランス語で「chien」、
ドイツ語で「Hund」といった具合に,それぞれ異なった言語圏の名称で呼ばれています。

このようなICZNの規約にとらわれない和名を含めたこうした“地方名称”は、すべて俗名(vernacular name)と
いうことになります。


 なお、化石の学名はこの現生生物の命名規約に準じて、名前を付けることになっています。




現生種と化石種 −種とは何か−


 生物や化石に名前を付けるときに、基本的な考えとして「種とはなにか?」ということが重要な命題になります。
このことを抜きにして名前を付けることはできません。なぜならば、名前は生物の種類(種)に付ける訳ですから。

現在、生きている生物の種の考え方(生物学的種概念)は、1942年にドイツ人のマイヤー(E. Mayr)によって
「種は、相互に生殖的に隔離されており、実際にあるいは潜在的に相互の間で交配が可能な自然集団の全群」であると
指摘されています。すなわち、種とは、交配して子孫が残せるかどうかということが最も重要な要素であることを
表したものと解釈できます。


 ところが、化石の場合、発見される多くの生物の遺骸(硬組織や軟組織)が石、つまり、鉱物によって置換されて
います。運よく生殖器官が見つかっても、現実的に交配することは、不可能です。したがって、化石を基にして、
子孫を作り出すことはできないのです。こうしたことから、化石の種とは、個体群の変異を考慮しながら、
生物の形の不連続性を基にして、種を認定するほかありません。

このような種のことを「形態種」(morphospecies)または、リネー種(linnean species)と呼びますが、
化石は正にこうした種なのです。つまり、極論を言えば、形質の違いが種の違いとなるわけです。




(2)につづく




教育学部 社会教育学科 教授 二上政夫





posted by 園遊会 at 16:09| Comment(0) | 恐竜・化石
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