2013年08月19日

新種化石発見とその命名(3)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





新種化石発見!



新種発見物語 −経験と運−


札幌から東へ約60km離れたところに、三笠市というかつて炭鉱で栄えた街があります。
この街を流れる幾(いく)春(しゅん)別(べつ)川(がわ)の上流には、桂沢(かつらざわ)湖(こ)(北海道で
最初に造られた多目的ダムによってできた湖)があり、その周辺は、古くから地質や化石の研究が行なわれ、
特にアンモナイトを研究する人であれば、誰でも知っており、一度は訪れるほど有名な地域です。

私は、新たなダム建設に伴い、1989年から10年以上にわたってここの湖周辺地域の白亜系の調査をしてきました
(図6、7)。





化石3.JPG






1994年9月の調査の際に新種の化石(アンモナイト)が発見され、その時の化石調査の一コマが『三笠市立博物館
年報 第13号』に掲載されています。以下にその一部を紹介します。




『9月4日(日)、快晴。午前9時、調査補助の嶋貫年男・川下由太郎(故人・ハンター兼)両氏と共に、
幾春別川支流の奔(ぽん)別(べつ)川(がわ)のかねてから気になっていた小さな枝沢に入る。私はルートマップ
(地質や化石の調査記録)を作成しながら上流へと足を進める。前方では姿は見えないが、嶋貫氏が初秋とはいえ、
沢を覆い隠すばかりに生い茂った草を刈ってくれており、時々、大型ハンマーで川床の転石(岩盤から風化などに
よってはずされて川の中に転がっているノジュールなどのことを指す)や露頭に挟在されるノジュールをたたく音が
「カーン、カーン」と沢に響く。私のすぐ前では川下氏がご自慢のライフル銃を肩に重くくい込ませながら、
小さなハンマーでノジュールをたたいている。いつもながら、調査はこうした場面の繰り返しである。
沢を登り、すでに3時間以上過ぎた頃であろうか。奔別川支流の枝沢では地層が立っているせいか、大小様々の
滝に出くわすが、ちょうど、小さななめている滝にさしかかった時であった。川下氏が径15cmほどのノジュールを
たたいていた。「おーい、おーい」と私を呼んだ。「化石が何か入っているようだが、暗くてよく見えん。
先生、ちょっと見てくれ。最近は、目が悪くなって、こまいものが見えにくくなった」と例のごとく冗談まじりに
言う。そこは、トンネルのように空を覆い隠すほどに草木が茂っており、確かに暗い。私が近寄って見ると、
ノジュールの割られた破断面に茶色の殻らしい化石の断面が曲線となって見える。さらに目を凝らしてみると、
ほんの僅か“イボ”のようなところがぽつぽつと見えた。「あっ、これは、もしかしたら」といった予感が脳裏を
よぎった。私は泥岩の露頭にくいいって、なめるようにノジュールの割られてあいた穴を見た。まだ、一部が露頭に
残されている。その穴の周辺にも破片が散在している。私はノジュールの破片を必死になって掻き集めたが、
残念ながら、少し足りない。しかし、どうにか元の丸いノジュールに組み合わせることができた。
再度、私の手の上に組まれて復元されたノジュールに目を凝らした。「いやー、川下さん、これは大発見だ」と
私は声をはずませた。』

 



化石3−2.JPG






以上が、化石発見の一コマですが、この調査の目的の一つに日本では珍しいDouvilleiceras属のアンモナイト
(示帯化石種の一つ:地層の地質年代を決定するのに重要な種類)を直接、露頭から採取することでしたので
(私の研究室にこれまでに採集されたDouvilleiceras属の標本は7つありましたが、全てが転石)、つい「大発見だ!」という
言葉がでてしまいました。

したがって、この採集時点では、そのアンモナイトが、新種というおまけが付くとは夢にも思っていませんでした。




4)につづく


教育学部 社会教育学科 教授 二上 政夫




posted by 園遊会 at 20:27| Comment(0) | 恐竜・化石
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