2013年08月26日

新種化石発見とその命名(4)

地域とともに活躍する川村学園女子大学



新種化石発見!





新種発見報告 −同定と文献−

 採集した際に割れてしまったDouvilleiceras属のアンモナイト標本を大学の実習室で木工用ボンドを使い、
元のノジュールに復元しました。完全にボンドが固結した後に、エアースクライバー(圧縮空気で岩石を削る
ペンシル型の機器)を使い、慎重に化石の周りについている不要な岩石を取り除きます。こうした作業を
クリーニング(剖出作業)と呼んでいます。

これでやっと化石の名前(学名)を調べることができるようになります。この名前を形態の特徴などから決めることを
生物学や古生物学などの自然誌では、鑑定とは呼ばずに「同定」といいます。ここから狭義の分類学の調査・研究の
始まりとなる訳です。


化石last.jpg



 Douvilleiceras属は、白亜紀前期の前期アルビアン期の後期から中期アルビアン期の前期(約1億1千万年前)に
汎世界的に分布していたいわゆる示準化石(学問的に正確には示帯化石といいます)で、古くからヨーロッパで
よく研究された種類です。

そこで、この同定作業では、アンモナイトを記載した古い文献(19世紀前〜中期頃に新種として記載・報告された文献)に
当たる必要があります。特に、フランスのドォービニー(A. d’Orbigny)のモノグラフ(1840-1842年)や
イギリスのケーシー(R. Casey)のモノグラフ(1960-1980)は、Douvilleiceras属種がまとまって記載されており、
同定する上で有用でした(図10、11)。

しかし、今回、得られた標本は、ヨーロッパで良く産出するDouvilleiceras orbignyi Hyatt(図12)という種に
殻装飾が良く似ているのですが、イボの数が異なることに気付きました。つまり、調査で得られた標本は、
側面のイボ数が6ですが、ヨーロッパのものは7あるのです。

その後、あらゆる文献に当たりましたが、6コ有ることを記述した論文はありませんでした。

こうした文献をしらみつぶしにチェックすることは、新種として報告する上でICZNによる先取権の問題が出てくるからです
(当然ですが、すでに報告・記載されていれば、新種として報告できません)。



化石last5.jpg




2003年に私は学術雑誌にこの資料を基に、新種として記載報告をしました。その時の学名は、
Douvilleiceras kawashitai sp. nov.(図13)として、発見した人の名(川下 由太郎氏)を種名に
付けております(sp. nov.とは新種という意味)。

なお、この時の論文には、同時に運良くもう一つ別標本が新種であることが判明し、
Douvilleiceras compressum sp. nov.(compressumとは殻がやせているという意味)で、殻の形態の特徴から
名前を付けております。このような例のほかに、化石では産出した地名が良くつけられ、最も有名なのは、
Nipponites mirabilis Yabe, 1904(図14)という「日本」という地名が属名に付けられており、
世界的に良く知られた異常巻のアンモナイトがあります。変わった形をしていますね!



化石last4.jpg




このように、化石では、発見者や研究者の人名が付けられる他に、形態の特徴や産出地の地名が名前(学名)に
付けられるのが一般的です。(ただし、著者が学名:属種名に自分の名前を付けることはできません)。

なお、アンモナイトは、恐竜(例えば、学名:Diplodocidae? gen. et sp. indet.
(ディプロドクス科に含まれる可能性があるが、属と種は同定できないという意味);和名:モシリュウ )や首長竜
(例えば、学名:Futabasaurus suzukii Sato, Hasegawa and Manabe、2006;和名:フタバスズキリュウ)などと違って、
和名が付けられたことはありません。

このことは、見方を変えれば、日本人の生活の中で、アンモナイトがあまり興味の対象になっていないことの
表れなのでしょうか?

なお、参考までにアンモナイトの別称は、漢字で「菊(きく)石(いし)」と表しますが、今はあまり使われないようです。

なぜ、菊石と呼ぶのでしょうか?調べてみて下さい!

最後に一言:
化石発見の嬉しさは、筆舌に尽し難い感動があります。

みなさんも是非、野外で化石採集を楽しんで、新種発見にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



教育学部 社会教育学科 教授 二上政夫





posted by 園遊会 at 11:11| Comment(0) | 恐竜・化石
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