2013年09月26日

「女は天の半分を支える」−近現代中国と女性の労働(3)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





(3)【中国版『女工哀史』?】



19世紀後半から20世紀初頭の中国では、産業の近代化に伴って、工場制手工業さらには機械工業が発達しました。
従って、中国大陸に数多くの工場が誕生し、そこで多くの労働力が必要となりました。

 
工場での単純労働は、前近代の農業や工業と異なり、それほど筋力を必要としませんし、職人の熟練の技も必要と
しません。それはとりわけ、どの国でも近代化の初期の段階で発達する軽工業(製糸業・紡績業など)において顕著です。

だからどの国でも、近代化を達成すると、低賃金で女性や子供を大量に雇用しました。
 
中国でも同様だったのです。

貧しい農村から都会に出てきて工場に勤め、劣悪な労働条件の下で酷使される若い女性たち…。




Tomioka .jpg



Inside Tomioka Silk Mill




と言うと、日本の明治時代の工場の女性のことを思い出す方もいるでしょう。

その過酷な労働と悲惨な境遇を描いた『女工哀史』という文学作品をご存じの方も多いでしょう。


それと全く同じことが、中国でも起きていたということです。

しかも悪いことに、その悲惨さを中国より先に経験していた日本で、女工の酷使が社会問題化した結果、
1916年に女性の深夜労働を法律で禁止すると、日本の資本家たちはコストの上昇を恐れ、生産拠点の多くを
中国に移転したのです。

その結果、中国の女性たちは新たに日本から移転してきた工場で、ますます酷使されることになりました。
中国での生糸の生産高は増加しつつありましたが、さらに加速し、1920年代にピークを迎えます。


その「成長」を支えたのは、言うまでもなく女工の酷使です。


すなわち、日本の女性が酷使から逃れることになったのと入れ替わって、中国の女性の労働がさらに過酷になったとも
言えるのです。



【女性たちの労働運動】

 
当然、その中で女性が待遇改善を求め、労働争議を起こすケースも出てきます。

第一次大戦後は、帝国主義や資本主義の行き過ぎに対する反発が強まった時期で、またロシア革命でソビエト連邦が
成立したという画期もあり、世界各地で社会主義思想に共鳴する人々が増え、民衆の権利向上が叫ばれた時期でもあります。


日本の「大正デモクラシー」もその一角を占めることはご存じでしょう。

 
中国でも、「五・四運動」(1919年に発生した、欧米や日本による帝国主義的進出がいっこうに改まらないことに
反発する大規模な民族主義運動)において、列強に抗議するだけでなく自らの文化の近代化も模索され、
多くの人々が社会運動や民族運動に関する理論と知識を身につけていきました。

 
ソ連の影響下に中国共産党が創設されたのもこの時期です(1921年)。

このような風潮の中で、中国でも各地で女工たちによるストライキが頻発するようになりました。



高津3−2.jpg



May Fourth




 …と、ここまで中国の19世紀後半〜20世紀初頭の女性たちの姿を見てきましたが、いかがでしたか。


「日本の明治大正の頃の女性の変化と、あまり変わらないね」と思った方も多いのではないでしょうか。 


その通り、時期がわずかに違ったぐらいで、そっくりな展開だったのです。
 
もっと言えば、産業革命と社会の近代化を経ていく中で、女性に求められる役割が変わり、それに対して
女性も新たに教育を身につけ、職業の幅を広げ、権利を主張し、男性に対抗し…という流れ自体は、欧米でも日本でも
中国でも共通だった、と僕は思います。それを「女性解放」と言うのであれば、時期の差こそあれ、欧米でも日本でも
中国でもちゃんと進んだのだ、と言っていいでしょう。


その後、20世紀の30年代40年代は、中国にとっては完全に「戦争の時代」でした。15年に及ぶ日中戦争、
その終結後の国共内戦…。

 
その果てに、中華人民共和国の成立がやってきます。

 
そこで現実のものとなった社会主義の世の中。完全雇用と男女平等が唱えられ、実際にかなりの程度実現したことは、
前に述べたとおりです。


 次回は、その中華人民共和国において、建国以来60年あまり経った現在に至るまでに起こった展開について、
まとめてみましょう。




(4)につづく

文学部 史学科 准教授 高津純也





posted by 園遊会 at 13:34| Comment(0) | シリーズ「女性と文化」
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