2013年10月04日

「女は天の半分を支える」−近現代中国と女性の労働(4)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





(4)【社会主義体制のもとで】


 1949年に成立した中華人民共和国は、労働者と農民によって築かれる国家として、社会主義に
基づく諸政策を実施してきました。

 建国後、一部の地主が大土地を所有して貧しい小作人をこき使うような農業を否定するため、
全ての土地を国有化し、全ての農民をいずれかの農場で耕作させ収穫も平等に分配する「農業の集団化」を
進めるとともに、一部の資本家が大工場を経営して貧しい労働者をこき使うような工業を否定するため、
全ての工場を国有化し、全ての労働者をいずれかの工場に分配し労働させるようにしました。


 従って、原則として失業は存在しない、誰もが必ずどこかの職場で働ける、ということになったわけです。
この点は前に記したとおりです。



高津4−1.jpg



People's commune canteen2




 就職難に苦しむ現代の我が国の若者には、なんて羨ましい国だ、と思われるかもしれませんね。


 しかし考えてみれば、国が全て労働力の分配を決めているということは、人々には職業選択の自由がない、
ということになります。決められた職場に必ず向かい、決められた職業に必ず就かなければならないのです。
また一方で、職場の方でも、雇用の自由がないことになります。決められた労働者を必ず働かせなければならず、
足りないとか余ってるとかで自ら調整することはできないのです。


 そしてそれとともに、国として男女同権・男女均等を掲げたので、上述の労働力に男女の差はないものと
されました。男性も女性も必ず就業できる。この点も既に紹介しました。

 女性が農場でトラクターを整備したり、街中でバスを運転したり、といった中国の風景は、
こうして誕生しました。「女だから」と就職で不利をこうむったり、同じだけ働いても賃金が低かったり、
といった差別から解放されたのです。


 「男女雇用機会均等法」が定着したにもかかわらず、裏では依然として男女間の格差が存在していると
言われる我が国の女性には、なんて羨ましい国だ、と思われるかもしれませんね。


 しかし考えてみれば、この方向性は容易に「女性にも男性と同じ労働を強要する」ことにつながって
しまいます。前に紹介した太平天国での女性の苦しみと同様です。女性に、男性への同化(=女性性の圧殺)を
強いることになるわけです。


 「女性も男性と同じ労働をこなす」ことさえ実現すれば、イコール「女性の解放の実現、男女平等の実現」と
短絡的に考えられがちですが、実際には、それでは根本的な問題解決にはならないわけです。

事実、結局は、若くて体力があり、未婚(=妊娠・出産・子育てという負担がない)の女性しか、
男性と全く同様に働き続けることはできませんでした。


【改革開放の功罪】


 さて、上述のような社会主義政策は、1970年代後半に、大転換を余儀なくされることになります。

がんばって働いても手を抜いても給料が変わらない→労働意欲の低下。
全ての労働者を必ず雇用しなければならない→圧倒的な非効率。
 
などなどの理由により、中国が経済的にも産業技術的にも他国より全く遅れてしまっている、
ということが明らかになったからです。


 ケ小平の指導の下で、「四つの現代化」(=農業・工業・国防・科学技術の近代化)という政策が
進められ、それを経済面で支えるために「改革開放政策」が開始されました。

社会主義国という看板は掲げたままですが、上述の「国有化・集団化」に代表される経済政策は転換され、
大胆に資本主義的な市場経済システムが導入されたのです。


 これによって、80年代後半以降の中国は急速な高度経済成長を遂げることになります。



4−2高津.jpg



Shanghai Tower construction, April 12, 2011


 近年、「GDPで日本を抜いた、米国に次ぐ世界第二位となった」という統計がセンセーショナルに報じられた
ことを記憶されている方も多いでしょう。


 しかしその成功のために必要だったのは、生産性の低い国営企業などのリストラ、無駄に多い労働者の削減、
といった「効率化」です。

 それは至極ごもっともなのですが、当然、失業者が街にあふれ、所得の格差が広がるという、
以前の社会主義国家中国では見られなかった光景が広がり、社会問題化することになったのです。

 それに伴って問題になっていったのが、男女間の格差、待遇の性差別、ということになります。

最後にこの点に注目してみましょう。




(5)につづく


文学部 史学科 准教授 高津純也








posted by 園遊会 at 15:51| Comment(0) | シリーズ「女性と文化」
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