2013年10月11日

「女は天の半分を支える」−近現代中国と女性の労働(5)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





(5)【リストラされる女性たち】

 全ての労働者に職場を保証する、という社会を実現した中華人民共和国。
 世界最高の女性就労率を実現した中華人民共和国。
 しかしそのことが、「労働力の極端なだぶつき」という形で中国経済を落伍させることになったのです。

これを是正するために急激なリストラが実行される中で、男女間の格差が問題になります。


 女性の方が失業率が高く、就職が難しい。
 女性の方が賃金が低く、非正規雇用が多い。


 …日本でも折に触れて問題になるテーマですよね。中国の経済システムが日本など諸外国に似たものに
なってきたことにより、必然的に社会問題も、諸外国と似たものになってきた、ということです。
中国政府は、女性や年少者を保護する法律を制定したり、違反した企業に対する罰則の強化を進めたりして
いるものの、現実はなかなか厳しいようです。


 男女ともみんな社会で働く、ということは、夫婦ならみんな共稼ぎ、ということになります。
現代中国では基本的に「専業主婦」はあり得ませんでした。


 しかし上述のように国を挙げてリストラを進める際、一家が完全に路頭に迷うのを防ぐため、
「夫婦の片方が離職することで、もう片方の在職を保証する」という策が多くの職場に浸透しました。
 つまり夫婦のどちらが辞めてもいいわけですが、筋力の差・出産や授乳の問題から、どうしても女性が
犠牲になるケースが多い、というのが現実です。もちろん、男性と全く同じ業務を続けられる女性もいますが、
全体としては少数にとどまらざるを得ないようです。


 また、急速な経済成長の陰で、それを牽引する沿海部・都市部と、昔ながらの農村部との間で、
経済格差がどんどん開いていきました。

 最近のニュースで皆さんがご覧になっているであろう中国の街角は、大変に文明的(?)ですが、
それは都市部の映像。農村は発展から取り残されるばかりです。



高津5−1.jpg




Village – South of Changjiang River




 そうなると、農村の男性は地元で働くより遙かに高収入を得られる都市へ「出稼ぎ」に向かうように
なります。その結果、畑を耕すのは女性と高齢者だけと言うことになり、女性は働かなければならないから
なかなか進学できない=低学歴化が進展する、そしてそのことが男女格差に輪をかける、という悪循環も
見られるといいます。



【「女性は家庭に戻れ」?】

 このように中国社会が大きく変わる中で、むしろ「女性は家庭に戻れ」という意見が積極的に新聞や雑誌を
飾るようになりました。男性も女性も社会で働くようになった結果、労働力が余ってしまっている。
それなら、女性は家事や子育てという仕事に専念すべきだ、と。

 そう言われたら、女性としてはどうでしょうか。当然、「性別分業論だ」「女性差別だ」という反発が、
女性の団体から強く上がるようになります。


 しかし、「女性は、その能力を活かして優秀な母親になるべきだ」「主婦や母親の仕事を、もっと高く
評価すべきだ」と言われたら、女性としてどうでしょうか。…言っていることは、実は「女性は家庭に戻れ」と
ほとんど変わらないのですが、こちらのような意見には、あまり反発が強くないようです。

 また、「女性は家庭に戻れ」に反発はしても、「じゃあどうすればいいの」という問いに対する具体的な
解決策は、なかなか提示できないと言います。

 さらに近年の若い女性の間では、自ら高キャリアで働きたい、社会で活躍したい、あるいはバリバリ稼ぎたい、
という将来の夢あるいは目標を抱く傾向が、減ってきているそうです。

 むしろ、高学歴高収入の男性と早く結婚したい、と。



高津5−2.jpg




Jiayuguan-071




 いかがでしたでしょうか。皆さんがお持ちだった「中国の女性」のイメージと比べて、どうでしたか。

 僕は、社会主義の道を全力で走っていた時期はともかく、その前もその後も、日本と大して変わらないなあ、
と思ったというのが正直なところです。

 最近、日本と中国との間は、ハッキリ言って険悪になっています。

 でも隣同士のご家庭の間でも、たとえ仲がよくても、問題が全くないということは稀です。
ゴミ出しとか騒音とか、「またかよ、困ったもんだな」と思わされることは多い。だからといって、
全面対決になるケースよりは、普段はニコニコとつきあうケースの方が普通でしょう。


 国同士だって、相手にウザい点があるとは思いつつも、何とかケンカを回避してニコニコとつきあう方策を
考える方が賢明でしょう。

 しかしそのためには、相手を理解する、という努力が欠かせません。

 理解すると一口に言っても、そのテーマは無限にありますが、今回は「中国の女性の姿」という形で、
その一つをご紹介してみたわけです。

 このテーマを手がかりに、中国がどのような問題を抱えているのか、そこに生きる人々はどんな社会を
生きているのか、様々な方面について知識を得ていってほしいと思います。

 自分(日本)の過去と現在を知り、相手(中国)の過去と現在を知ること。おそらくそれが、
よりよい未来を築くための必要条件だと僕は信じています。




文学部 史学科 准教授 高津純也





posted by 園遊会 at 13:06| Comment(2) | シリーズ「女性と文化」
この記事へのコメント
中国の女性問題について調べていてたまたま拝読しました。
非常に読みやすく、興味深い記事でした。
また、写真もレイアウトもセンスが秀逸!
複雑な中国の女性の状況を日本との類似性も併せて非常に良く噛み砕いて分かり易くまとめられていると思いました。
最後の中国というお隣さんとの心構えと言う点も深く頷きました。
Posted by 斎藤じゅんこ at 2017年01月10日 13:01
ご丁重なコメント、ありがとうございます。
Posted by 高津純也 at 2017年01月18日 16:56
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。