2013年11月22日

TOKYO 2020 (3)

地域とともに活躍する川村学園女子大学





立候補都市の顔ぶれ


イスタンブール

 イスタンブールは,これまで2000年から2012年までの夏季オリンピックに,4大会連続で立候補して
いましたが,すべて落選。今回で5度目の挑戦です。

 近年のトルコ経済の順調な発展により,競技会場の建設,インフラの整備が急速に進んだことに加え,
国民(市民)からの高い支持などが評価されています。

 また,「BRIDGE TOGETHER(ともに橋を架けよう)」というイスタンブールが掲げたスローガンは,
ボスポラス海峡をはさんでアジアと欧州にまたがる地理的特徴を生かした,東西の文化と未来をもつなぐ
オリンピックを強調しています。

 「イスラム圏初」に加え「初の2大陸同時開催」という明確な大会理念が強みです。

 反面,激しい交通渋滞が予想され,また,隣国シリアの内戦も気がかりなところです。



マドリード
 マドリードは,2012年と2016年の大会に2大会連続で立候補しましたが,惜しくも落選。
今回で3大会連続の立候補です(それ以前にも,1924年,1936年,1972年に立候補)。

 債務危機による深刻な経済状況で,新設する会場の建設費やスポンサーの獲得などに影響が出かねない
との指摘があるなか,今回は「スマート五輪」をテーマに掲げ,ほとんどの競技施設がすでに建設済みである
ことをアピールしています。

 また,IOC委員の過半数近くをヨーロッパ出身の委員が占めているため,マドリードは一定の票を確保できる
のではとの見方もあり,マドリードを「最有力」とする声も聞かれました。



東京都

 オリンピック招致の海外向けスローガンは,「Discover Tomorrow(未来をつかもう)」。
国内向けスローガンは,「今,ニッポンにはこの夢の力が必要だ」に決まりました。

 東京都は,2016年大会立候補の際に指摘された,「メインスタジアムの新設」,「メインスタジアム周辺の
交通インフラ」,「選手村の広さ」,「国民の支持率」という4つの課題を解決する,新たな大会構想を
考える必要がありました。

 このうち,「国民の支持率」を除く3つの課題については,1964年の東京オリンピックのメインスタジアムと
なった国立競技場(正式には,国立霞ヶ丘競技場)を改築して使用することで解決しました。

 2016年の計画では,メイン会場となるオリンピックスタジアムを,晴海に新設する予定でした。

これは,現在の国立競技場が,老朽化のため改修工事をする必要があることと,陸上競技の規則
(例えば,レーンの数。規則では9レーン必要だが国立は広さの関係で8レーンまでしかない)を
満たすことができないなど,オリンピックスタジアムとしては使用できないという理由からでした
(2016年の計画では,サッカー会場としてのみ使用)。


 そのほかにも東京都としては,都市整備などの思惑もあったのでしょうが,いずれにしても2020年大会の
構想では,現在の国立競技場とその周辺も敷地にして,新しい国立競技場を建設する計画を決定しました。
新しい国立競技場は,2019(平成31)年3月に完成予定です。

 既存の施設を立て替えて使用することで,メインスタジアムの新設という課題は解決しました。
また,晴海案では,スタジアム近辺にひとつしか駅がなく,「交通インフラ」という課題をあげられて
いましたが,国立競技場周辺には多数の駅があるため,この課題も解決。

 さらに,2016年の計画では,有明に31ヘクタールの選手村を計画していたのですが,
リオデジャネイロの75ヘクタールと比較されて「狭い」と指摘されました。
しかし,晴海のスタジアム建設予定地(44ヘクタール)に選手村を建設することで,十分な広さを
確保することができ,この課題も解決。

 残るは「国民の支持率」という大きな課題です。

 震災からの復興もいっこうに進まず,「こんなときに・・・」という声は,根強く残っています。

 しかし,あることをきっかけに支持率が上がっていったのです。

 2012(平成24)年に開催されたロンドンオリンピック。

このブログでも取り上げましたが,みなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

 大会が終わって1週間が経った8月20日。メダリストたちの凱旋パレードが東京・銀座で行われ,
炎天下のなか50万人(主催者発表)が詰めかけました(そのときの模様はこちらから)。

 この凱旋パレードこそ,世論がオリンピック招致に前向きになったターニングポイントだと,
筆者は考えます。東京でオリンピックのあの感動を味わいたい,選手たちの姿を目撃したいという機運が
徐々に高まり始めました。

 2012年5月23日に行われた1次選考では,他の都市が70%を超える支持率であったのに対し,
東京都は47%(反対も23%でトップ)しかありませんでした(IOC調査。以下も同様)。
しかし,2013(平成25)年6月25日にIOCが公表した評価報告書では,3都市中最も低かったものの
70%の支持を集め,反対は16%でマドリードの20%より低いという結果でした。

 こうして,国民の支持率という課題も解決しました。


運命の最終プレゼンテーション

 滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」が注目を集めた最終プレゼンテーション。

 意外にも,投票権をもつIOC委員は,この最終プレゼンテーションを聞くまでどこの都市に投票するか
決めていないという人が少なくありません。

 それだけに最終プレゼンテーションは重要な意味をもちます。

 オリンピック開催を引き寄せた東京招致団の最終プレゼンテーションは,まさに命運を分けた45分間だったと
いえるでしょう。IOCのジャック・ロゲ会長(当時)が「とても印象的だった」と称えたように,
3都市のなかで日本が抜群にすばらしいプレゼンテーションであったといえます。

 世界的な不況が長引き,中東などで政情不安が続くなか,東京の主張は「安心,安全」の確実性に加えて,
スポーツの本質にIOC委員の目を向けさせました。

 筆者がとくに印象に残ったプレゼンターは,パラリンピック陸上の佐藤真海(まみ)さんです


 骨肉腫に冒されて右足を切断した19歳の少女に,生きる力を与えた「スポーツの力」。
東日本を襲った大地震による津波で,ふるさとを引き裂かれた被災者に希望を与える「アスリートの力」。

 「私がここにいるのは,スポーツによって救われたから。スポーツが人生で大切な価値を教えてくれた。
2020年の東京で,その価値を世界に広めたい」。


 情感を込めた手のしぐさと,穏やかな笑みに込められた佐藤さんの思いは,IOC委員だけではなく,
スポーツを愛する世界中の人々に届いたことでしょう。

 この約4分間のプレゼンテーションは,間違いなく東京招致を引き寄せました。


(4)につづく


教育学部 社会教育学科 准教授 藤原昌樹







posted by 園遊会 at 17:25| Comment(0) | スポーツ
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